パキスタンでのポリオ撲滅活動における課題の克服

8年前に私がパキスタンのポリオプラス委員会にマネージャーとして加わったとき、ポリオ撲滅の完遂は目前に迫っているように思われました。私は、ポリオを単に「まひを引き起こす病気」として曖昧に理解するのではなく、「急性灰白性髄炎」という名前でしっかりと勉強することにしました。病気の発生原因や影響、ポリオウイルスの種類、予防の方法、ウイルス発見の困難さなどを研究しました。 

2012年、パキスタンの国内情勢が一変しました。過激派が台頭し、子どもたちへの予防接種チームを拒否し始めました。また、保健従事者が活動中に頻繁に標的として狙われるようになったのです。 

過激派の支配地域に住む子どもたちは予防接種を受けることができなくなりました。また、私たちがこれらの地域にワクチンを届けることも困難になりました。保守的な地域では、ポリオワクチンに対する誤解が広がりました。私たちが直面した一番の課題は、これらの地域の人たちが疑いと蔑視を向けてくる中で、どのように彼らの考えを変えることができるか、ということでした。

この課題を克服するため、私たちはまず、予防接種チームの規模を拡大しました。また、ポリオ撲滅活動のパートナーと綿密に協力し、戦略と画期的なアプローチを考えました。具体的には、ハイリスク地域でのリソースセンターの設置、常設のチェックポイントを利用した遊牧民や国内避難民への予防接種の強化、読み書きのできない人の認識向上のためのオーディオブックの利用、有力な宗教リーダーを対象としたワークショップの実施、ロータリークラブ主導の貧しい地域での保健キャンプ実施の奨励などです。 

一方で、国内でのポリオ発症数が増加し、2014年には野生型ポリオウイルスによる発症が300件以上も報告されました。その後私たちは地道な努力を続け、パキスタン政府との協力を強化し、ポリオウイルスの伝搬を抑えることができました。今日現在、パキスタン国内で報告されたポリオ発症数は5件、世界全体では11件に留まっています。 

国際ロータリーは、ポリオワクチンを開発したジョナス・ソーク博士を記念し、10月24日を「世界ポリオデー」と定めました。ポリオ撲滅のためには、すべての常在国が粘り強く努力していく必要があります。

マラソンでも最後の1キロが一番きついものです。しかし、ポリオ撲滅というマラソンは、もうそこまでゴールテープが迫っています。

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ハミド・ジャファリ(WHO東地中海地域ポリオ担当ディレクター) | 3月. 25, 2024